Delta in the Darkness

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

【Fate/hollow ataraxia】旅立った空

・【Fate/hollow ataraxia】フィナーレ直前を元にした二次創作です。
・【stay night】未プレイの人はネタバレ注意。
・【hollow ataraxia】は未プレイでも問題ないです。
・【WIZARD】は一週おやすみさせてくださいm( __ __ )m  



   【Fate/hollow ataraxia】~旅立った空~


 港に来ると見知った顔がいた。長身の男が、港に釣り糸をたらしている。
 いつものランサーじゃない。アホみたいに釣竿を並べていた英雄王でもない。
「釣れてるのか?」
 俺は何と無しに、そいつに声をかけた。
「何だ……おまえか……」
 俺が近づいてきたことなど遠に気づいているだろうに、その男はそう気だるそうに返答した。
 いや、そもそも本当に気づいていなかったのかもしれない。
 港に釣り糸を垂らすこの褐色の男の背中は、普段と違って心ここにあらずといった感じだった。
 服装はあの『英霊釣り対決』時のような勝負服ではかった。たまに新都で見かけた時に着ている、黒いジーンズとシャツのラフなものだ。
 気のみ気のままここに来て、おもむろに竿でも投影したのだろうか。
 微動だにしないで立ち尽くす彼の傍らには、戦利品を収めるバケツすらない。まだ戦果はないのだろうか。
「しかし意外だったな。あんたにそんな趣味があったのは」
 少なくとも、俺にそんな趣味はない。よく無趣味といわれるが……。料理とかは趣味には入らないのだろうか……。
 それも、最近は弟子の桜に負けそうなのだが……。
 俺には釣りの趣味はないと言おうとして、その言葉を飲み込んだ。
「ああ……。確かに国内にいるうちは、興味を持ったことはなかったのだがな……」
 しかし彼は、飲み込んだ俺の言葉の先を紡ぐ。
 国内にいるうちは……? ならばそれは……。
「日本を出てからか?」
 その問に、アーチャーは答えなかった。



 いつか、衛宮士郎は日本を出る。
 藤ねぇには、それっぽいことは伝えてある。今のところ、遠坂に付いてロンドンへ行くのが最有力だろうか。
 では、“英霊エミヤ”がこの国を旅立った時は、果たしてどのような状況だったのだろうか?


『士郎はさ……帰ってくるよね?』


 進路相談の時の藤ねぇの台詞が、ずっと心に引っかかっていた。
 切嗣は日本を空けることが多かった。
 さぞかし、藤ねぇは気をヤキモキしていたことだろう。

 そんな時、ふと思う。

 コイツは……英霊エミヤは……



「なぁ……」
「初めて糸を垂らしたのは、もう名も忘れた国の戦場だった」
 こちらの質問を遮る、この男らしい嫌なタイミングで、アーチャーは語り始めた。
「何も救えず、己の無力さに打ちひしがれている時、一つの泉を見つけた」
 自分の質問は一先ず後回しにし、俺はアーチャー言葉に耳を傾けた。ひょっとしたら、自分の未来になるかもしれない男の言葉。
 コイツがこんな風に自分を語りだすのは珍しい。というか、多分初めてだ。
 そもそもこうして、ゆっくり会話するようなこと自体、どちらとも無く避けていた感じがある。
「なんとも云えぬ幻想的な風景だったことは、よく覚えている。かの聖剣が眠る泉とは、ここのことではないのかと思ったほどだ」
 かの円卓の騎士、ベディヴィエールが聖剣を投げ込んだという、あの泉か。
 セイバーの……あの、エクスカリバーを……。
「陰鬱な気を紛らわせてくれるのではと思ってな、気まぐれで釣り糸を垂らした……が、これが全くかからんのだ」
 半ば自嘲気味に、アーチャーは笑った。
「その泉の魚は不思議な生き物でな。釣り糸を伝って泉へと届く、どんなに微量な殺気でも見逃さなかった。敏感に感じ取り、決して餌に食いつこうとはしなかった」

 何故だろうか。ただの釣りの話の筈なのに……

「心を静めた。殺気を抑えることを学んだ」

 俺にはこの英霊の、悔やみきれぬ後悔の言葉に聞えてならない……

「いや……感情を殺す術……“こころ”を殺す術を、学んだ」

 俺のその考えは、多分間違いじゃない。

「今にして思えば、それは誤りだったのかれしれん」

 正義の味方の……成れの果て。

「釣りなどで誤魔化さず……感情を殺さず……声を大にして叫ぶべきだったのではないかと……」

 ひょっとしたら自分が至るかもしれない、一つの可能性。

「例えその想い(こえ)を受け止めてくれる存在が、傍にいなくても……な」

 俺と……切嗣の……一つの夢の形。

「手前勝手な話しだ」

 理想の果て。

「自分自身の“理想(エゴ)”のため、そんな受け止めてくれる存在を、

         

 私は置き去りにしてきたというのに」



 それで……悟った。

 ああ、この男は……。

 英霊エミヤは……

 還らなかったのだ。

 ただただ理想を追い求め続け、

 決して後ろを振り返ることも……無く。





 あの日それぞれ 歩んだ道に

 今の僕はどんな風に 言い訳をすればいいのだろう

 隠し切れない弱さ感じ 闇雲に躓く度に

 あの日の君と言う存在が


 この体をシメツケル



 揺ぎ無い自分 未来を誓って

 君のその強い瞳を信じて

 旅立った空 孤独にも似た自由

 引き返すことはしたくないだけ



「身の上話なんて珍しいな。なんで急にそんなこと話すのさ」
 多分遠坂にも、話した事はないんじゃないか?
「さぁ……な」
 なんでコイツがこんな事を話し始めたのかは……なんとなく“解る”。
 間もなく、“宴”は終わる。
 魂の起源を同じくする二人の男は、その終幕を敏感に感じ取っていた。



                               ~Fin~

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://deltainthedarknes.blog96.fc2.com/tb.php/137-99c50fc3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 | HOME | 

《プロフィール》

真神 剣輔

Author:真神 剣輔
携帯ゲームサイトの【開発】ディレクター。
最近【運営】のウェイト重めですが
(´;ω;`)

《はじめに》

案内事項

《カウンター》

《QRコード》

QR

携帯からも見られますヽ^シ'ω')ノシ

《最近のコメント》

《カテゴリー》

《アーカイブ》

《ブログ内検索》

《RSS》

《リンク》

このブログをリンクに追加する                   ※順不同敬称略m(__ __)m

《Amazon》

《魔法使いの夜》

『魔法使いの夜』応援バナー

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。